アンリ・マティス

20 世紀絵画の巨匠で「色彩の魔術師」と呼ばれるフランスの画家アンリ・マティスは、フォーヴィズム (野獣派)絵画運動のリーダー的存在でもありました。
1869 年、フランス北部のカト=カンブレジに、穀物商の長男として生まれ、1887 年に父の希望でパリ大学の法学部を卒業します。21 歳の時に虫垂炎に罹り、療養中に母から贈られた画材によって絵画に興味を持ち、画家に転向する決意をしました。父親を失望させながらも 1891 年にパリの私立美術学校に入学し、さらに官立美術学校のエコール・デ・ボザールを目指します。初期の作風は写実的なものでしたが、次第にセザンヌ、ゴッホ 、ゴーギャンら印象派の影響を受け、感覚的で自由な色彩による絵画表現を追究するようになりました。
マティスは明るく大胆な色彩の作品を次々と発表したことにより、ルオーやドランらと共にフォーヴィズム (野獣派)の画家と呼ばれるようになりますが、そのフォーヴィスムとしての活動期間は意外に短く、1917 年にニースに移り住むと、原色を使いながらも穏やかで落ち着いた作品を描くようになります。それと共に 彼は「私は人々を癒す肘掛け椅子のような絵を描きたい」と語り、フォーヴィズムの画家と呼ばれるのを嫌 うようになりました。
1941 年には十二指腸癌を煩い車椅子生活となってしまいます。この頃から絵筆を使うことが難しくなった ため切り絵の作品を多数残しました。また、緑好きが高じて植物園のようなアトリエで、大好きな鳥を、多 い時には 300 羽も飼っていました。そんな草花が満ち溢れ鳥がさえずるアトリエから数々の傑作が生み出さ れました。享年 85 歳。
■アンリ・マティス(Henri Matisse)生没年:1869 年 12 月 31 日- 1954 年 11 月 3 日 作品タイトル:「La Dance(first version)」 1909 年製作