講演会「生活習慣病の予防と対策」田中朝江医師
6月10日(火)12時から日系文化センター会議室に於いて田中朝江医師の講演会:「生活習慣病の予防と対策」が行われました。日本人お医者さんの存在はバンクーバー地区に住む我々日本人に大切な問題と思いますが、その数少ない日本語の出来るお医者さんがリタイアーなどの理由で減っています。出来ることならお医者さんのお世話にならないで健康を保っていけたら良い、とみんな考えております。いかにして健康な毎日を送って行けるだろうか? 今現在の生活パターンを続けて行って良いのだろうか? このテーマを日本語で分かりやすく話が聞ければ有り難い。こんな会員皆様の希望にお応えするため今回の講演会が計画されたものです。
田中朝江医師は東京生まれ8歳で渡加。8年前UBC大学医学部を卒業したBC州医師。VTマガジンに医事相談連載、ラジオニッポンの医療相談に毎週木曜日に出演、若手の日本人女医としてバンクーバー日系社会で頼りにされております。田中医師はボランテイアでネパールの寒村で医師活動をした時のことを例に出しながら、現代のカナダに住む我々が気が付かない中に罹りやすい生活習慣病を解り やすく説明されました。ネパール中の寒村では電気、上下水道が無く粗食の自給自足食生活であり、食糧を確保するために一日中働くので運動は充分であった。しかし村人達は靴を履かず裸足で歩くので足の裏から感染する寄生虫病が多く、また栄養失調による湿疹、胃潰瘍等がこの村の生活習慣病であった。
現代の文明社会やカナダでは考えられないことである。しかしカナダなど文明国家の住民も昔は良く運動し働き食べ物を生産してきた。現代の便利な生活が病気を増やしている。車社会が人間の歩く時間を短かくし加工食品が料理する仕事の時間を縮め精製した食品が栄養分布を変え高血圧、高脂血症、糖尿病などを引き起こす原因となっている。血圧の上の方(最高血圧)は心臓が血液を送り出す時 の圧力で、これが高いという事は、何らかの理由で毛細血管まで血液が行き難い時に、血のめぐりが悪い時に心臓が懸命に働いている状況です。これが長く続くと心臓が肥大するし、毛細血管が壊れたりします。(草花に圧力の高い水をホースでかけると草花が薙ぎ倒される状況を想像して下さい。)血圧の下の方(最低血圧)は心臓がゆるんで血液が戻る時の圧力で、これが高いという事は、血管が狭くなっている状況で、詰まる危険性をはらんでいます。
血糖値が高いという事は、血液がドロドロになっている、毛細血管や腎臓のフィルターなどが詰まりやすくなります。目の毛細血管が詰まると失明の危険がありますし、手足など末端に血が行かないと、しびれや感覚低下をおこします。そもそも人間の身体生理機構は何千年も何万年もかかって今の状況に作られた。貫して飢えとの戦いであり、いかにして高カロリーのものを摂るか、カロリー摂取 率を高めるかが大切であり、高カロリーのものの方がおいしく感じるように遺伝子に刷り込まれている。ところが、文明社会では、ここ数十年で食生活や生活習慣が変わってしまった。加工食品も増え、保存剤も入っている。栄養のバランスや衛生面で現代の方がよい事も沢山あるが、少なくとも文明社会の生活習慣病に関しては、食事(食べ物) については、簡単にいえば、数十年前の食事に戻れば良い。加工食、タバコを避け、塩分、アシのあるもののあぶ
ら(脂)、アルコールはひかえめにする。ドカ食いをさけ、何度も少しずつ食べ、空腹にしない。空腹にすると身体は飢餓状況が来たと思いエネルギー吸収率を高めて次の食事を待つ。そこへドカ食いをすると大変。
食事と並んで大事なのが運動すること。昔は食べ物を得るにも食事を作るのにも今よりはるかにエネルギーを使った。ストレスも悪い。もともとストレスというのは熊に出会った、崖が崩れるという様な緊急事態に対応するた運動能力を上げる目的で、アドレナリンを分泌し血圧を高め筋肉に多量の血液を送り込むもの。逃げる、走る、殴る、大声を出すなどで解消され正常に戻る。然し現代のストレスは逃げられないものが多く、がまんする。これが良くない。これを考えて運動をする。あるいは、生命に危険の無いものはストレスにしない。夫婦間の注文や文句、もめごとは聞き流す、水に流す。運動の為には、せめてエレベーターでビルなど高い建物の上の階に昇る代わりに階段を歩いて登る。ショッピングセンターでもその駐車場の、店からわざと遠い場所に車を停めるなど生活の中に運動を取り入れる。便利なものを避け汗を出す。買い物では荷物を持
ち、人に頼まず率先して庭仕事やお掃除、補修仕事をする。食事をしてからすぐ横になってTVを観ながら寝てしまうなど一番良くない。プールで水泳や体操をすることが身体に一番良いなどと説明があった。引き続き質疑応答となり満室状態の参加者から熱心な質問が相継いだ。講演はとても分かりやすく為になったと参加者多数から好評であった。(44名出席)
多忙なスケジュールのなか、桜楓会のために時間を割いて下さった田中朝江医師に感謝申し上げます。

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