春の時の移りは確実に進み決して待って呉れないので、3月半ばコロナワクチンを受ける少し前には、テュワッセン町にあるバウンダリーベイ広域公園を訪れ季節の渡り鳥の様子を見に行った。浜辺の春の陽は暖かかったが風は冷たくスケッチは長くは続かなかった。干潮時にお祖父さんが孫と浅瀬を散歩していたシルエットは印象的だった。

4月になるとバンクーバーの街に花が咲きだし人々の顔が明るく成り町中に活気が出て来る。
毎年この時期には桜の花が描きたくて懸命になってしまう。
今年の春はゆっくり近づいてきた様で、私は日が長くなって来ると気忙しく成り頻繁に街を歩き回って変化を見張る。新渡戸紀年庭園の松月桜や染井吉野桜、白普賢桜などは少し季節がずれて咲く様だが、ダウンタウンやスタンレイパーク周辺は白梅紅梅が咲きその頃から早咲きの染井吉野や梅桜(日本の十月桜)などが街路樹に植えられているので季節の変化が身の周りに見られて楽しい。
今は真白な染井吉野が満開で町中春爛漫の気分である。故郷の上野・東豊中で小学生の頃に遊んだ兎川の土堤沿いの並木の古木の桜並木は忘れられない。周辺の田んぼで蛍、イナゴ、トンボやどじょう、ザリガニなど子供にとって絶好の遊び場であった。生活と密着した桜花の思い出である。
当地で次第に地勢風土や植生などを知り始め周りを眺める年代になった。桜並木は素晴らしい。
特に公園での曲線状の遊歩道に沿った里桜は美しい。中でもベストだと感じるのはスタンレイパークに在る日系戦没者慰霊塔の周辺に植えられた桜は逸品である。
慰霊塔の直ぐ傍には遅咲きの大提燈桜、生垣の周りには今満開の染井吉野桜の木々、そして最も意味ありげに見え本当に素晴らしいと感じ入っているのは4月中旬咲きの白妙桜の並木である。これは姉妹都市の神戸市と横浜市の市長さんから寄贈された物だと言う事をバンクーバー新報で最近知った。今では何万を超すと言うバンクーバーの桜の始まりとの事だそうだ。
「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天香山」(持統天皇)の百人一首歌で読まれた季節の変わり目の奈良の風情を歌った白妙のイメージである。
エドモントンからバンクーバーへ帰って来て以来毎年スケッチしながら観察し続けている。今年は毎日と言って良いほど気を新たにして幹枝の時期から開花の時期を含めて本画制作を目標に色々試みている所ではある。
今日(4月13日)の午後白妙桜はキラキラと輝いていた。


バラードインレットの青い海の色が背景になり一層綺麗な

桜並木である。水彩画:20x25cm 4月13日現場写生