朗読とバイオリン

去る5月15日(日) Unitarians Church of Vancouverにて、「朗読とバイオリン」のリサイタルが開かれました。
これは桜楓会の主催となるイベントで、広く日系社会に呼びかけて行われたものです。
リサイタル当日は朝から雨だったため、お申し込みされた方々の出足が危ぶまれましたが、ふたを開けてみると、会場は約120名の来場者で埋まり、感激と感謝のうちに同イベントを開催することができました。
そして、リサイタル終了後は、変幻自在にして感情豊かに読み上げた朗読者と、名器をあやつり妙なる音色を響かせたバイオリニストへの賞賛の声にあふれていました。また、「感動した」「笑いも涙もあって良かった」などのご感想も多数寄せられたことは、このリサイタルの企画から実行までに関わった役員会や関係者にとっても、大きな喜びとなりました。
朗読と音楽の組み合わせ自体は、ことさら珍しいものではなく、同種の催しは世界各地でよく開かれています。その場合、「音楽」の多くはピアノやギターといった、いわゆるコード楽器(和音を鳴らせる楽器)の類が使用されることが多いのですが、バイオリン一つとの組み合わせというのは、かなり異色のものと言えます。
こういう稀有なコンビネーションのパフォーマーとして、大和奈緒美さんと長井明さんという、これまた稀有な才能をお持ちのお二人を得たことは、幸運以外の何物でもありませんでした。しかも、どちらも桜楓会の会員ということで、イベントの準備のために何度か繰り返した会議の席でも、気さくな雰囲気で役員たちと交流されるお姿が今も印象に残っています。
これまで、司会や朗読などで活躍されてきた奈緒美さんも、演奏家として百戦錬磨のキャリアをお持ちの長井さんも、「朗読とバイオリン」の組み合わせのステージは初体験ということで、全く手探りの状態からスタートしました。リハーサルも試行錯誤の連続で、特に最も苦労したポイントが両者の音量の調整でした。しかし、当日はその点も見事解決されて、会場は朗読と音楽の豊饒な饗宴に酔いしれていました。
二年ほど前に発案企画したこの会をようやく実現できたことは、微力ながら監督を務めた丸尾個人にとっても大いなる喜びです。

当日の朗読作品                          
・川端康成「雨傘」 (小説)
・小川未明「野ばら」(童話)
・サムエル・ウルマン「青春」(詩)
・吉野弘「虹の足」「奈々子に」「祝婚歌」(詩)
・「マーフィーの法則」(警句)
・秋元康「川の流れのように」(歌詞)
・俵万智「サラダ記念日」(短歌)

当日の演奏曲
・バッハ 前奏曲(無伴奏バイオリンパルティータ第3番より)
・パラディス シチリア―ノ  
・モリコーネ ガブリエルのオーボエ
・フォーレ シチリア―ノ   夢のあとに
・ラブランド You Raise Me Up
・ドボルザーク 我が母の教えたまいし歌 ユーモレスク
・モンティ チャルダッシュ   
・ホルスト ジュピター
・見岳章 川の流れのように
・クライスラー 愛の喜び  
・ラフマニノフ ヴォカリーズ


「ステージのお花のデザイナーは桜楓会会員のシモン清子さん、助手は同会員で私の妻、長井せりです。お花がステージを盛り上げてくれました。」

(長井明)
         

(記 丸尾豪司)