持続性

600年前(室町中期)の「能」の大成者、世阿弥(1363-1443)の残した「風姿花伝」は父親観阿弥の教えを整理し子孫に伝承する能楽論として編纂した21種の伝書の一つです。花伝第七には、花について次の様に書かれています。「花とは、その時々にありし花のままにて、種なければ、手折れる枝のごとし。種あらば年々時々のころはななどが逢はざらん。ただ返す返す初心忘るべからず。」


この絵はエドモントンの自宅裏庭で咲き続けた芍薬(ピオニー)花のダイナミックな姿です。30年頃前からアルバータ州エドモントン市郊外30km南西に在るアルバータ大学植物園内で地球温暖化による自然環境での大きな変化が起こっている光景をみたのです。この辺りは古代地層が残っており砂丘状の丘陵地や沼沢地が混じった松林が続く一帯です。園内の彼方此方の白樺林の中に植えられていた芍薬が年々の干魃で次第に消えて行く中、種を採集して自庭で育てた芍薬の花でした。
この水彩画にある芍薬の花々が、蕾が膨らみ、花が咲き、花びらを失いながらも種子を作り花も咲き続ける姿を観て、更に土の下には既に来春の為の根に新しい芽が用意されている事を知り、植物の命の持続性を人生になぞらえて観たものでした。
人の老後期も又同じ、初心忘るべからず、であると思います。