ラドナー港とスコッチポンド

数年前フレイザー河の河口一帯をスティーブストン港から出発し河のデルタ地帯両岸を観光して巡るギクミ号と言う船で旅をした事がある。中でもこのフレイザー・デルタの歴史を示す足跡が幾つか見られた。このラドナー港はその中の一つの見所である。以前にも当誌で幾度か報告したが、リッチモンド市のロンドン開拓農場とロンドン埠頭(2022年10月号参照)と関係が深かったのが、当時デルタ市地域の農場から生産されるプロデュース(農産物類)がこのラドナー港から外輪船(Puddle Wheel)でリッチモンド市のロンドン埠頭やニューウエストミンスター港など経由でフレーザーキャニオン航路としては最上流地点イエールまでの主要運輸機関に使われていた。その起点であるこの港はフレイザー河の南岸に沿う多くの洲島の間を縫って本流に上がって行くのである。水彩画の絵左手の埠頭の背後から遠くに見える様な静かな水路に沿ってはかなり瀟洒なボートハウス(水上住宅)地帯が続いている。やっと暖かい太陽が射した4月初旬の風景である。洲島の森の柔らかな緑が静かなムードを醸し出していた。


4月下旬には大干潮の日がありスティーブストンにあるゲリーポイントパークでは見たことも無いスコッチポンドが現れた。それは非常に緊張感のある空気が漂う数時間であった。この水路に入港していたすべての漁船は埠頭に停泊して時を待っていた。ここは第二次大戦前は安宅(アタギ)家族の営業していたボートビルディングの栄えた非常に幅狭い水路である。干潮時などは進水作業が容易に出来なかったらしい。鍵状に海に接した水路だ。絵の手前の水路の左側の先から入港している。何時も非常に良い緊張感であると思う。