行燈の夕照

鈴木春信の座敷八景シリーズから「行燈の夕照(あんどんのせきしょう)」をご紹介いたします。秋の夕暮れ、座敷で手紙を読む吉原の遊女。その手元を明るくしようと行燈に灯りをともす禿(かむろ)と呼ばれる見習いの娘。背景には美しく紅葉したもみじ。遊女の着物にも栗の穂と鳥脅しの鳴子(なるこ)が描かれていて秋の風情が漂います。
座敷八景は江戸幕府の1600石取り旗本で俳人でもあった大久保巨川(おおくぼきょせん)の依頼で、配りものとして描かれました。巨川は春信に多くの作品依頼をして第一人者に育て上げ、錦絵(浮世絵)の誕生に多大な貢献をした人物です。
またこの作品を描いた鈴木春信は江戸神田白壁町の戸主で、近所には平賀源内が住んでおり、共に草創期であった錦絵の工夫をしたと伝えられています。
■鈴木春信(すずきはるのぶ)享保10年(1725年)~明和7年(1770年)
「行燈の夕照」明和三年(1766年)ごろの作品。ボストン美術館所蔵