猿わか町夜の景

歌川広重の名所江戸百景から「猿わか町夜の景(さるわかまちよるのけい)」をご紹介いたします。
猿若町とは現在の浅草付近で、天保の改革により風紀上の理由から芝居小屋はこの地域に集められました。しかし近隣に吉原があることも手伝い、以前よりも繁盛する結果となりました。地名の「猿若町」の由来は歌舞伎の始祖である猿若勘三郎の名から付いたと言われています。
芝居を観た人々が賑やかな猿若町をそぞろ歩く風景が大胆な遠近法で描かれています。季節は秋とされているので、中秋の名月が足もとを明るく照らしだす反面、長い影が秋の寂しげな雰囲気をかもし出しています。
多くの浮世絵がヨーロッパの印象派の画家たちに影響を与えたことは有名ですが、特にゴッホの作品には如実にそれが現れています。左の「夜のカフェテラス」も並べてみるとご覧のとおり。                   

広重の浮世絵に多く使われているこの青色は「フェルメールブルー」になぞらえて「ヒロシゲブルー」と呼ばれています。歌川広重は江戸の火消しの家に生まれ、13歳で両親を亡くします。幼い頃から画才があり、生涯絵師として人生をまっとうし、その間に描いた作品は2万点とも言われています。安政5年没。享年は62歳でした。


            (ゴッホ作・夜のカフェテラス)