浅草金竜山

歌川広重の「名所江戸百景」から、雪景色が美しい「浅草金竜山(あさくさきんりゅざん)」(安政3年制作)をご紹介いたします。この作品も広重の代表作の一つと言われています。
画面手前、浅草寺の雷門(正式名称:風雷神門)から奥に見えているのは宝蔵門と五重塔。浅草のシンボルともいえる雷門の赤い大提灯の全体像を描かずに右上に配することによって遠くの建造物との遠近感を出し、建造物の朱赤に対して、門塔、木々、人々の傘に降り積もる雪を着色せずに白抜きで描いて、しんしんと降る雪景色を見事に表現しています。
広重の名所江戸百景シリーズ(全119枚)は晩年の作品として知られ、江戸末期の風景を独創的なアングルで描いた傑作シリーズです。江戸の市中で大ヒットし、一作品につき、なんと一万枚以上も後刷りされたそうです。
当時の江戸は安政2年(1854年)の安政の大地震で甚大な被害を受けたあとで、このシリーズは災害からの復興を願って制作されたといわれています。