5月

「恐るべき君等の乳房夏来る」 わが青春に三鬼の句あり
予科練に行きて帰らぬ兄をふと思ふキャビンのほの暗き灯に

一首目は、西東三鬼は戦後の俳句会を俳諧味に満ちて牽引した気鋭の俳人でした。
上の句はその引用ですが、自分が最初に結句を「わが青春にありし思ひぞ」としましたが三鬼の有名な句とあり、事実を淡々と述べた方が想像の余地が広がるというサジェストをいただき推敲した末のことでした。当然直感的には、はち切れそうなブラウス姿を見たら自分の青春時代の想像には輪が広がったと思いますが…。
そもそも「恐るべき…」の句は戦いに敗れすっかり元気を無くした男性に対して新しい時代に生き生きと立ち向かおうとする女性たちを眩しく、やや押し付けたことに畏敬の念を感じながら見る男の句と言われております。皆様はどうお感じになられますか? 
 二首目は、数年前ゴールデンウィークの頃、茨城県の取手市の知人宅にお世話になった際、予科練平和記念館に連れて行って貰いました。霞ヶ浦海軍航空隊は阿見町に在り、実に多くの面で兄の幻影を偲ぶ事ができました。
当時は生めよ増やせの時代で、長兄は海軍で無事帰還しましたが次兄の故八木原甲子男は予科練でした。次兄と私は20歳も年が離れており「時の弾みで生まれた!」と母によく言われてしまいっ子だった所為か大事に育てられ、学校の宿題など、ほとんどが父がやってくれて依頼心の強い子になってしまいました。そんなわけで私は次兄の事は何一つ知りませんでした。只、母親の話だけのように記憶しております…。
 8月という月にはもう一首これに因んだ歌を考えたいと思います。