10月

☆ 葦原に身じろきもせぬ青鷺はわれとは違ふ時を持つらむ
私の住むデルタ地区はフレーザー河の河口にあり、大変動植物の繁殖には恵まれた環境です。そのため自然保護地区とか渡り鳥のサンクチュアリなどがあり、そこでは白雁や白頭鷲を始めいろいろの渡り鳥やビーバー等の小動物を見ることができます、、、私のように高齢に差し掛かるとアオサギ君の時間の過ごし方がもったいないように 思えてきます、、、。
☆ 来る春に花咲くことを疑はず球根にそっと腐葉土被(き)せる
慈しみを抱き、腐葉土の着物を着せて暖かく土の中で眠り、来る春には夢を叶えてもらいたい気持ちです。
「千振はお腹(なか)の中で甘くなる」母の口癖耳に残れり
高齢を迎えても、五臓六腑が元気なことは感謝そのものです。あらゆる臓器のミトコンドリアの元気度には、昔の人は甘いものを欲しがる子供たちにこんなかたちで教えていたようです。逆に甘いものはお腹に入ると苦くなると、、、。
☆ 老いに目を背(そむ)けて来しが現実と受け止めざるを得ずなりにけり
私たちの生は大地の生の一部であって、動植物と同じようにそこから養分を引き出しています。大地の生のリズムはゆったりとしています。 バートランド・ラッセル卿の言葉を借りると、、、私は傘寿を目前にしてこんな歌も詠んでみたくなりました。 
☆ 長雨の旅の湯宿の朝餉時味噌汁の香に心なごみぬ
秋の長雨に滅入る宿坊で、味噌汁にたつ素朴な香によせた歌です。