西郷輝彦が亡くなりました。享年75歳でした。彼は俳優としても成功しましたが、御三家の歌手の一人でした。デビューした頃に歌った「星のフラメンコ」 (1966年)が、今も記憶に残っている方は多いでしょう。 この曲は、スペインでフラメンコを見た西郷の希望で作られたということですが、当時は小学生も口ずさんだ「好きなんだけど 離れてるのさ」という、高嶺の花の女性に寄せるプラトニックな秘めた愛情を、ラテンのリズムで情熱的に歌ったところに、昭和歌謡の幅広さや奥深さを見るような気がします。
昭和生まれにはなじみのない歌が居並ぶ令和の「紅白歌合戦」を見るにつけ、昭和歌謡の多様さに思いを馳せる今日この頃ですが、由紀さおりが歌った「夜明けのスキャット」も、画期的なヒットソングでした。わずか3分のうち実に半分がルルルやラララなどの歌詞のないメロディで、後半やっと登場する歌詞も素朴なものでしたが、この曲も大人から子どもまですべての世代を魅了しました。(1969年 作曲いずみたく)
もともとは、テレビ番組のエンディング用に作られた歌詞のない短い曲だったのですが、それが評判になったため、急遽歌詞を付けて発売されたのが「夜明けのスキャット」です。カラオケもネットもなく、歌詞が簡単に手に入らなかった当時、歌を覚えるには、レコードを買って歌詞カードを見るか、テレビやラジオで流れる歌をリアルタイムで必死に覚えるかメモするか、しかなかったのでした。その点、歌詞を気にせず口ずさめる「夜明けのスキャット」は鼻歌としても最適で、それも爆発的な人気につながったと言えます。
「スキャット」は、ジャズの巨人ルイ・アームストロング(愛称サッチモ)が考案した歌唱法のことで、歌詞を持たないその唄い方は、伝説の深夜番組「11PM」のダバダバ・コーラスや、今も続く長寿番組「徹子の部屋」のテーマ曲などでも、広く知られています。
https://youtu.be/mvssMZIwtjA 夜明けのスキャット
クラシック音楽にも、スキャットのように、歌詞を持たない歌い方がありますが、こちらは、「ヴォカリーズ」(母音唱法)と呼ばれます。20世紀ロシアの偉大なピアニストにして作曲家ラフマニノフが作った「ヴォカリーズ」が最も有名ですが、愁いをたたえたその静かな調べは、100年以上に亘って人々の心をとらえ続けてきました。またバイオリンやチェロの大切なレパートリーにもなっています。
https://youtu.be/pl4z1j72258 「ヴォカリーズ」 幸田浩子 (楽曲解説付き)
https://youtu.be/u3n5j68QcYc 「ヴォカリーズ」 本田美奈子(昭和歌謡の歌姫)
https://youtu.be/MT2mNOZSyqY 「ヴォカリーズ」 バイオリン版 川井郁子
フラメンコのようなラテンのテイストがお好きな方には、こちらもおすすめです。「ヴォカリーズ」と並んでブラジルのリズムがはじけます。
https://youtu.be/maQ8t8mJkTM 「ブラジル風バッハ第5番」 ベルリン・フィル 野外コンサート
https://youtu.be/pUCuEd1tjCg 「ブラジル風バッハ第5番」 より「アリア」
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