鹿毛達雄さんを悼む

桜楓会の名誉会員でいらっしゃった鹿毛達雄さんが今年2022年1月26日にお亡くなりになりました。享年86、緩慢に進行する健康悪化と闘いながらの数年でした。深く哀悼の意を表します。
鹿毛達雄さんは歴史家、人権活動家として広く知られた方で、1975年にカナダに移住された後、日系コミュニティの中でも新しい移住者などを支えるための情報の提供や具体的な支援など幅広い活動をされ、コミュニティの育成に大いに貢献されてきました。鹿毛さんがバンクーバーに移住者として来られた頃は日系移民100年を祝う一大イベントを控え、日系コミュニティも盛り上がりつつあった頃です。1975年には隣組が組織され、今に続くコミュニティの活動が本格化した時代です。
1877年(明治10年)、日本人として初めてこの地を踏んだ永野萬蔵さんを記念して、1977年に「日系カナダ人100年祭」がスタートしました。またこの10年後の1988年に、時のマルルーニ首相と合意・締結した戦後補償のためのリドレス運動も、この日系100年祭が恐らく強く後押しをしたのでしょう。
同じく1977年に、グレーターバンクーバー移住者の会が設立されました。現在ではJCCA(日系カナダ市民協会)の日本語部として吸収されてしまっていますが、当時は日本からやってきた移住者たちが唯一集まることのできる場所がここでした。このグレーターバンクーバー移住者の会も鹿毛さんの努力で発足したものです。それから8年後の1985年に我らの桜楓会が発足しました。グレーターバンクーバー移住者の会に集う、主に日本から退職者移住をしてきた人たちの相互協力と情報交換、及び親睦などを目的として、移住者の会の会長だった鹿毛さんの発案と後押しでできたものでした。当時はカナダには退職者移住というカテゴリーのビザがありました。
その後も日系カナダ人のための戦後補償(リドレス)の運動をはじめ、少数民族の人権擁護の運動にも、鹿毛さんは携わっていかれます。お亡くなりになる直前まで、JCCA(日系カナダ市民協会)の人権委員会の委員長を務めていらっしゃいました。リドレス合意を終えた後、1998年12月には「日系カナダ人の追放」(明石書店)を上梓されています。
思えば日系コミュニティの健全な発展や人権擁護にその半生を捧げられた鹿毛達雄さんでした。心からご冥福をお祈りいたします。
(会長 久保克己)