突然ですがクイズです。 次の文は、どれも言葉の間違い(誤用)があります。どこをどう間違っているかお分かりになりますか。
1.クラシック音楽は敷居が高いので苦手だ。 2.彼は豪快で破天荒な性格の持ち主だ。
3.うちの部長は、会議が煮詰まってくると、いつも憮然とした態度をとるので評判が悪い。
さあ、いくつお分かりになりましたか。正解はこのページの一番下にあります。これは十数年前に国語審議会が発表した「よくある誤用」の報告に含まれる語彙の一部です。その誤用の多い語彙の中には、他に「失笑」も含まれていました。「失笑」を「笑いも出ないほどくだらないこと」と思う人が多いようですが、「笑ってはいけない場面でつい笑ってしまう」というのが正しい意味です。 笑ってはいけないタイミングで思わず笑ってしまった。これは、誰しも経験のあることではないでしょうか。
さて、クラシック音楽では、この「失笑」と同じく、「してはいけないタイミングでしてしまう拍手」というものがあります。まだ終わってもいないのに、曲の途中で思わず手を叩いて、周囲のひんしゅくを買うというのがそれで、コンサートではしばしば見かける光景です。この拍手は、良い演奏に対する賞賛の気持ちの率直な表れ、と言えなくもないですが、大方の人にとっては、やはり迷惑なもののようです。そこが他のジャンルと比べて、クラシック音楽の「敷居が高い」と言われるゆえんかもしれま・・・あ!これは誤用でした。
晩年のベートーヴェンからその才能を激賞されたという、オーストリアの作曲家ウェーバー(19世紀)の作った「ダンスへのお誘い」(舞踏への勧誘)が、まさにそのような間の悪い拍手の「被害」によく遭っている曲です。これは、華やかなダンスホールを彷彿(ほうふつ)とさせる曲で、次々と組み合わされたワルツはどれも聞きごたえ抜群です。
しかし、これを名曲たらしめているものは、むしろそのワルツをはさんだ前奏と後奏にあります。どちらもチェロと木管楽器(フルートやクラリネットなど)の対話で構成されていますが、チェロは紳士、木管楽器は淑女を表しています。紳士から淑女にダンスのお誘いがかかりますが、彼女はそれをお断りします。(ポーズ?)しかし、もう一度ていねいに誘う言葉を受け入れ、二人はペアになります。そしてダンスの開始。目くるめく舞踏会の様子が目に浮かぶような音楽です。やがて踊り終わった後、ジェントルマンは短いお礼の言葉を伝えます。レディもこれに短い言葉で応え、やがて、それぞれその場を去ります。後には、ほのかな残り香のような余韻だけが漂う・・・。そんな大人の男女の粋な掛け合いが、この前奏と後奏の味わいです。
問題の拍手は、このダンスが終わって後奏(ダンスのお礼)に入る前によく起こります。ワルツの最後が重厚な和音で盛大に完結するため、ここを曲全体の最後と思い込んで、必ずと言っていいほど大きな拍手をする人がいます。時には、鳴りやまない拍手に後奏をあきらめて途中で演奏を切り上げてしまう演奏家や、最初から後奏をカットした版で演奏する割り切った団体もあります。
「ダンスへのお誘い」は元々ピアノ曲ですが、独墺の音楽の崇拝者だったフランスのベルリオーズによって管弦楽化されています。
ダンスへのお誘い https://youtu.be/wLdnmueC0lE管弦楽版 https://youtu.be/ycCgRLKgdhoピアノ原曲 (丸尾豪司)
※クイズの正解 1.敷居が高い 2.破天荒 3.煮詰まる 憮然 どこが誤用なのかは辞書やネットなどでお調べください。
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