干支(江戸)の仇をニャが先(長崎)に討つ ワルツを踊る猫 ルロイ・アンダーソン2023.01.26 04:23今年の干支(えと)はウサギですね。飛び跳ねるウサギのように、どなた様にも、今年が飛躍の年になることをお祈りします。 そこで、巻頭言の先陣を切るのもウサギ…と言いたいところですが、さにあらず、ネコの登場です。ご存じのように、干支は1月から12月までの各月にそれぞれ動物が割り当てられていますが、そこに人間に近しいはずのネコが入っていません。これは、ずる賢い ネズミにだまされたからで、ネコがネズミを捕る理由も、まさにそこにあるとされています。しかし、ネズミの方も、さるもの引っかくものです。「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む」の言のとおり、簡単にはやられていません。「トムとジェリー」のドタバタ劇も、むべなるかなです。「江戸の仇を長崎に討つ」ならぬ「干支の仇をニャが先に討つ」。今年先頭の曲は、そんな気の毒なネコに贈ります。 ルロイ・アンダーソン(20世紀アメリカ)の「ワルツィング・キャット」(ワルツを踊る猫)は、ダンスを 楽しむネコたちの悦に入った姿が目に浮かぶキュートな曲です。しかし……、最後にはやはりオチが待っていました。https://youtu.be/iNFibL9c1eE ワルツィング・キャットhttps://www.youtube.com/watch?v=DOlG8Ut-gTc ワルツィング・キャット トムとジェリー動画付干支に入らない動物はネコだけではありません。ここから先は、干支の外れ組コーナーです。 最初はロバです。グローフェ(20世紀アメリカ)の組曲「グランド・キャニオン」の中の「山道を行く」は、景勝地グランドキャニオンの険しい山道を人間を乗せたロバがのんびり歩く様子を描写しています。ムチの音を表すバイオリン独奏で始まりますので、今なら動物虐待音楽というところでしょうが、なにせ100年近く前の曲ですからね…。それに続いて、ロバのコミカルなひづめの音が響き、のどかなカウボーイソングが大峡谷にこだまします。 https://www.youtube.com/watch?v=6_7DA1G6tVs 山道を行く続いてサン・サーンス(19世紀フランス)の「動物の謝肉祭」からカメです。イソップ童話では、油断したウサギを追い抜いて勝ちを収めたカメですが、干支のレースではウサギも同じ轍は踏まなかったようです。しかし、ここでもカメはローギアながら、地道な歩みを進めています。なお、この原曲は、運動会のレース音楽の定番「天国と地獄」(オッフェンバック作)です。https://youtu.be/pjcKrqbVhVU カメ 「動物の謝肉祭」には、チェロ独奏の名曲として知られる「白鳥」や「鶏」「かっこう」など鳥類(酉)のような干支の動物に交じって干支から外れた動物たちもたくさん登場します。続いては、ゾウと水族館(魚)です。このゾウもワルツを踊っています。コントラバス(ダブルベース)が奏でるそのダンスは、踊る猫よりもある意味キュートかもしれません。干支の中で水に住む動物、つまり水族は龍(辰)だけですが、龍の正体は長生きした蛇の化身だという説と、黄河の「登竜門」という難所を昇り切った鯉がトランスフォームしたという説の二つがあります。しかし、天を駆け陸にも出現しますので、結論として、龍はスーパー両生類ということころでしょうか…?!? 不毛の推論はさておき、水族たちの優雅な泳ぎにしばし酔いしれてくださいませ。 https://youtu.be/dsmZW4actBo ゾウhttps://youtu.be/IyFpZ5MZ7kk 水族館Q「日曜日の動物園にいちばんたくさんいる動物は何でしょう?」 A「人間です。」 干支の動物のハズレ組、最後はヒトです。ただし、ヒトはヒトでも「動物の謝肉祭」に登場する人間は、なんと…ピアニスト!朝から晩までスケール(音階~ドレミファソラシド)の練習ばかりしているピアニストみたいな仕事は、まるで檻の中の車を駆け続けるハムスターみたいなもので、人間のやることじゃない!とでも言いたげです。https://youtu.be/EGNSepkDK1s ピアニストその昔、「てめえら人間じゃねえ!」の決めゼリフとともに、正義の刃で悪漢どもを斬り捨てていく「勧善懲悪」型の時代劇が人気を博したことがあります。しかし、ここでサン・サーンスがピアニストを揶揄(やゆ)しているのは、もちろんそういう意味ではありません。彼自身は大作曲家にして超一流のピアニストでした。(5曲遺したピアノ協奏曲はどれも傑作として知られています。)ですから、 これは大ピアニストの、自虐的かつフランス風のブラックジョークとして捉えるのが妥当な音楽ということになります。(丸尾豪司)0コメント1000 / 1000投稿
0コメント