変容する植物 ― アカンサス

今回は趣向を変えて、美術作品に植物モティーフが使われている例を見てみたいと思います。
西洋の古典建築(ギリシア、ローマ時代の建築様式とそれを手本にした後世の建築)の主要な要素の一つは円柱です。実際に荷重を支える役割だけでなく、装飾モティーフとしても円柱はしばしば用いられています。その中で、ヘレニズム期からローマ時代にかけて最も好まれたものがコリント式と呼ばれる円柱でした。ほっそりとした柱身に植物を図案化した装飾的な柱頭を頂き、華やかな印象を与える様式です。この柱頭の装飾は地中海地域に自生するアカンサスを図案化したものと言われています。さらにアカンサスのモティーフは、柱頭だけでなくレリーフや壁画などに使われている例もあり、唐草文様と並び古代以降もポピュラーな装飾モティーフでした。
アカンサスは光沢のある濃い緑色の葉が放射状に広がる多年草で、その生命力の強さから、不死や再生の象徴とみなされていました。実はバンクーバー市内でも植えられているのを見たことがあります。

コリント式円柱: ケルスス図書館、114-117AD. エフェソス(トルコ)

アカンサスのモティーフの浮彫り: Ara Pacis Augustae(アウグストゥス帝の平和の祭壇)、13-9BC. (ローマ)

アカンサス、ロードス島(ギリシア)