カナダ版「威風堂々」?State Occasion

2月の祝日、ファミリー・デーはいかがお過ごしだったでしょうか。日本の祝日は、建国記念日(11日)と天皇誕生日(23日)です。わずか28日しかない2月に祝日が2回もあるというのは、ちょっと得した気分でしょうか。家庭を大切にするという趣旨のファミリー・デーに対して、国家と関係する2つの祝日。偶然とはいえ、カナダと日本の対照がちょっと面白いなと思います。
バンクーバーでは、日本領事館の主催になる天皇誕生日のレセプションが毎年開かれています。私もご招待に預かり参加させていただいたことがあります。その際、会場に据えられた日加の国旗を目の当たりにしながら、開式にあたって流された両国国歌、「君が代」と「オー・カナダ」によって、式典の雰囲気が一気に高まった記憶があります。


君が代クロニクル
「君が代」の歌詞にはもとになった和歌があります。「わが君は 千代(ちよ)に八千代(やちよ)に 細(さざ)れ石の 巌(いわを)となりて 苔のむすまで」という読み人知らず(作者不明)の古い歌です。これは平安時代の「古今和歌集」(905年)に収められています。歌の意味は「私の(大切な)あなた様には末永く健在でいてほしい。砂粒が岩となり、さらにそれに苔が生えるほどの長い間(元気でいてほしい)」というものです。内容から考えて、恋愛歌ではないかという説もありました。この歌は公家(貴族)たちに愛され、やがて文学作品の中でもよく引用されるなどして、町人や農民の間でも広く知られるようになっていきます。そうしているうちに「わが君」という特定の個人を指す言葉が「君が代」という、為政者の治める時代を表すように変化していきました。幕末になって開国を迎えた日本は欧米列強との軍事力や文化の差に驚きと脅威を感じていました。やがてイギリス皇太子が来日して明治天皇と謁見する際、イギリス国歌と並んで演奏すべき曲を持たなかった日本は、新政府の威信をかけて大急ぎで国歌作成に乗り出します。歌詞と して選ばれたのが、江戸時代まで広く歌い継がれてきたこの歌でした。作曲は、新政府の依頼によって、その皇太子に随行していたイギリス人軍楽隊長によるものでした。それは現在の君が代とは全く異なるメロディです。(楽譜や録音も存在します。)その後、日本に赴任していた海軍軍楽教師のドイツ人が、宮内庁から提供された日本古来の音楽の楽譜をもとに、軍楽隊用に編曲したものが今の「君が代」の原型となりました。
世界には、第二の国歌と呼ばれる音楽を持っている国がいくつかあります。昔から自国民に親しまれてきた曲です。以前この巻頭言でご紹介した曲の中では、オーストリアの「美しく青きドナウ」(ヨハン・シュトラウス)やフィンランドの「フィンランディア賛歌」(シベリウス)などが、それぞれの国の第二の国歌と呼ばれています。 

アメリカは「星条旗よ永遠なれ」(スーザ)がそれにあたります。日本にはそれに該当する音楽はないようです。  

https://youtu.be/V-CCQ_p6XHE?list=RDV-CCQ_p6XHE  星条旗よ永遠なれ バーンスタイン指揮       
カナダ国歌の「オー・カナダ」は、もともとケベック国の建国記念日を祝う式典のために作られた曲で、当初はフランス語の歌詞しかなかったのですが、後に英語の詞もつけられ現在に至っています。トロント出身のロバート・ファーノンの「State occasion」という行進曲にはブリティッシュな雰囲気があって、かつてカナダの宗主国だったイギリスの第二の国歌といわれる「威風堂々」(エルガー)を思わせます。ファーノンはジャズトランぺッターとして活躍し、ハリウッドの映画音楽の作曲などでも成功した人物です。

https://youtu.be/uN2IxZp9x6k?list=RDuN2IxZp9x6k State Occasion(式典行進曲)作曲者の指揮