5月4日は「スター・ウォーズ」の日です。これは同映画の中の名ぜりふ「May the Force be with you」 (フォースとともにあらんことを)と5月4日(May the 4th)を掛けて生まれた記念日です。Forceフォースは万物に宿るとされる架空の生命エネルギーのことで、中国の気功などがそのモデルとなっています。その他にもこの映画には、中国の古代思想や日本の禅や武士道や歌舞伎など東洋の伝統文化から着想されたワードやネーミング、アイテムやファッションなどが数多く登場します。また黒澤明監督の映画からの引用やパロディがちりばめられていることもよく知られています。スター・ウォーズの脚本(原作)執筆と監督を務めたジョージ・ルーカスが、映画人として最も大きな影響を受けた人物が黒澤でした。
公開と同時に大ヒットした「スター・ウォーズ」は当初の予定どおりシリーズ化され、エピソード1から9までの壮大なスペースオペラとして完結しました。これは、通常3編ずつのグループに分けられます。発表順に並べると、①エピソード4~6の旧三部作、②1~3の新三部作、③7~9の続三部作です。これらは40年以上の歳月をかけ、さらに紆余曲折を経て出来上がったものです。なお、ルーカスは①②で脚本と制作を担当しましたが、③では、そのどちらにも直接の関りを持っていません。
面白いのは、原作の途中にあたるエピソード4から始まって6で完結したはずのシリーズが、16年も経った後に物語の始まりで あるエピソード1~3に遡って作られていることです。これには様々な理由が唱えられています。そして、なぜエピソード7~9には、ルーカスがノータッチなのか。残念ながら、このわずかな紙面ではそれらについてくわしくお伝えすることができません。
その代わりに、クラシック音楽の中で、スター・ウォーズとよく似た出来事をご紹介したいと思います。原作の第2部が先に舞台化され第1部がその後だったという、名作オペラの誉れ高い「フィガロの結婚」(第2部)と「セビリアの理髪師」(第1部)です。
この2つの台本は、フランスの小説を原作としていますが、作曲は前者が18世紀オーストリアのモーツァルト、後者は19世紀イタリアのロッシーニです。2人の活躍した年代からも明らかなように、後半が先に、前半が後に作曲されています。(原作には 第3部もあって、20世紀にフランスの作曲家がオペラ化していますが、こちらは全くと言っていいほど上演の機会がありません。)
https://youtu.be/JAywJzT_8fs?list=RDJAywJzT_8fs
歌劇「フィガロの結婚」序曲 東京フィル('25大晦日コンサート)
この「フィガロの結婚」では、対立してきたあくどいお金持ちの老人が、実は主人公の理髪師フィガロの父親であったという事実が明らかになりますが、これも、悪の権化ダースベーダーと正義の主人公ルーク・スカイウォーカーが父子だったというスター・ウォーズの設定と同じで、その点も興味深いと思います。(「I am your father」 「No!!!」もスターウォーズの歴史的名ぜりふの一つです。)
「セビリアの理髪師」も「フィガロの結婚」もハッピーエンドの物語です。ただし、そこに至るまでには修羅場の連続です。愛し合う男女に向けた横恋慕や嫉妬や思い込み、誤解や行き違いなど人間の欲望がむき出しになります。次から次へと騒動が巻き起こる様は、関西名物「吉本新喜劇」を思い起こさせます。吉本新喜劇は長年にわたって変わらぬ人気がありますが、ドタバタだけのオペラは、一時的な人気は得ても、風雪に耐えた例がありません。この2作が今もさかんに上演される一番の理由は、欲望と挫折だけに終わらず、人間のレジリエンス(回復力)に対する深い洞察を込めた脚本と、何よりもその音楽が一級品だからです。
https://youtu.be/8mVfVaqGZnQ?list=RD8mVfVaqGZnQ
歌劇「セビリアの理髪師」序曲 ウィーンのサマー・コンサート
正確なことを言えば、モーツァルトがフィガロの結婚を書く前に、パイジェルロという人物がセビリアの理髪師をオペラ化しています。しかし、後にロッシーニがそれより優れた同名の歌劇を作ったために、ほとんど忘れ去られてしまいました。
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