フランクフルトのシュテーデル美術研究所は、「閉ざされた庭」と呼ばれる作品を所蔵しています。上ライン地方出身の匿名の画家が1400年代初頭に製作したこの板絵には、塀で囲われた色彩豊かな庭園内での牧歌的な光景が描写されています。書物を紐解く聖母マリア、その足元では音楽の守護聖人である聖チェチリアが幼子イエスにプサルテリオン(ハープの原型)を弾かせ、さらにサクランボを摘む聖ドロテア、砂金をすくう聖バルバラ、大天使ミカエルを囲んで聖ゲオルギウスと聖オズワルドの姿が見られます。庭園にはスズラン、アイリス、ユリ、カーネーションなど四季の花が咲き、まさに楽園のようです。この絵の主題は何でしょうか。
中世から近世にかけて、これに類似した「閉ざされた庭」を描いた作品が多く制作されました。これらは旧約聖書の「雅歌」第4章12節「わが妹、わが花嫁は閉じた園、閉じた園、封じた泉のようだ。」が典拠とされています。女性賛美の生々しい記述が続く「雅歌」を、後世の神学者たちは聖母マリアの暗喩と解釈しました。「閉ざされた庭」は純潔を意味し、さらに庭園は「楽園」にも通じます。「閉ざされた庭」は外界と隔絶し、調和に満ちた聖なる空間であり、地上では実現されることのない理想の姿です。
「閉ざされた庭」1400年代初頭 シュテーデル美術研究所、フランクフルト
「バラ園の聖母」1435年頃、ミケリーノ・ダ・ベゾッツォ(推定)、
カステルヴェッキオ美術館、ヴェローナ
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