今月の22日、映画「スター・ウォーズ」最新作の公開が始まった。5月のスター・ウォーズ記念日に合わせてのことかもしれない。今回はエピソード6と7の間を埋めるストーリーのようだ。半世紀前、まだ10歳だった1977年に映画館で見た「エピソード4」(第1作)の感動が今も忘れられず、そのときめきをこの最新作で再現したと今回の監督は語っている。彼と同じように、この映画を初めて見た時の感銘を語る者は、世界に数知れない。
かく言う自分も、2時間があっという間だったことを今でもよく覚えている。その日本での公開は、アメリカの1年後だったこともあって、この映画の圧倒的な評判とともに、すでにさまざまな情報が日本にもたらされていた。
映画の世界では、昔から「名画には名曲あり」という言葉がある。優れた映画には、必ずと言っていいほど優れた音楽が付随しているというわけだ。古いものだが「ウエストサイド・ストーリー」や「サウンド・オブ・ミュージック」、「タイタニック」などはその最たるものと言えるだろう。そして、「スター・ウォーズ」も、映画そのものと同じぐらい音楽が評判になっていた。その中で自分がいちばん興味をもった点は、この映画の音楽全てをロンドン交響楽団が演奏しているという事実だった。ロンドン交響楽団(以下LSO)は、イギリスのナンバーワンにして、世界的なトップオーケストラである。その長い歴史の中で世界の巨匠たちと成し遂げてきた名演奏は、枚挙にいとまがない。それがハリウッド映画の伴奏を務める?なぜ?自分も含めて世間の反応はおおむねそんな感じだった。オーケストラはクラシック、つまり芸術音楽を演奏するための団体で、映画のような娯楽音楽には関与しない。そんな不文律があった時代の話である。つまりサブカルチャーと芸術の間には深い溝があったのである。
それは作曲においても事情は同じだった。映画音楽を含めたポピュラー系の作品は、クラシック音楽よりも一段下の音楽であるという認識が当時は支配的だった。「ロミオとジュリエット」「ゴッドファーザー」など映画音楽の名作を残したニーノ・ロータは「自分はクラシックの作曲家で映画音楽は趣味に過ぎない」と常々公言していた。同じイタリア人で「ニュー・シネマ・パラダイス」「ミッション(ガブリエルのオーボエ)」やマカロニ・ウエスタンの名曲を物したモリコーネも、音大で学んだのは現代音楽であり、生活のために引き受けた映画の仕事には長い間ジレンマを感じていた。が、ある時思い立ってメロディ優先の路線に舵を切ったところ、それが大衆に支持されたことから音楽家としての新たな使命に目覚めたと語っている。やはり現代音楽が主だったにも拘わらず、今や、世界に愛されるジブリアニメの専属作曲家ともいえる久石譲にもよく似た経緯があった。人生は何が転機になるか分からない。
長い間、ハリウッドの映画音楽は主に地元の音楽家たちが担ってきた。現地には常にフリーランスの音楽家たちが集まり、映画会社との契約の中で、その度に臨時編成のバンドや楽団を組んでは作品作りに参与していた。したがって、本来ならば「スター・ウォーズ」のサントラもその形での収録となるはずだった。それがなぜ歴史ある交響楽団の起用となったのかといえば、一つは作曲者のジョン・ウィリアムズが自分の音楽を演奏するには、本格的な大編成の管弦楽団を必要とすると感じていたからだった。彼も専門教育を受けた作曲家で、「スター・ウォーズ」より後の「インディ・ジョーンズ」や「ジュラシック・ワールド」や「ハリー・ポッター」などの音楽も、既存のクラシック作品と比べて何ら遜色のない分厚く豊かで壮麗な響きが魅力の一つとなっている。
もう一つの理由は、当時、同団の常任指揮者だったアンドレ・プレヴィンとジョン・ウィリアムズが親しかったということが挙げられる。若い頃は二人とも同じ作曲家の弟子だった。プレヴィンは、もともとジャズピアニスト、作曲家として成功した人物で、ジャズの 名盤をいくつも残し、映画音楽の世界でも多くの功績を残していたが、やがてクラシックに進出し、当時躍進中の指揮者だった。また、クラシックファンにはあまり知られていなかったことだが、LSOはそれ以前からロック音楽との関りが深かった。たとえばイギリスのロック音楽をオーケストラ用にアレンジしたレコードを出したり、リック・ウェイクマン(ロックグループ「イエス」のメンバー)がジュール・ヴェルヌの同名小説から作ったシンフォニック・ロック「地底探検」のコンサートに参加するなど、クラシック以外の音楽とも親和性を高めていたのである。
リック・ウェイクマン「地底探検」 ロンドン交響楽団https://youtu.be/-EcNdiNaYl8?list=RD-EcNdiNaYl8
LSOに続いて、アメリカのロス・アンジェルス・フィルハーモニーが録音した「スター・ウォーズ組曲」のレコードがスマッシュヒットを記録すると、堰を切ったように世界中のオーケストラが、こぞってジョン・ウィリアムズの大編成映画音楽をレパートリーに加えていった。そして、クラシック音楽の二枚看板ともいえるウィーン・フィルとベルリン・フィルも、ついにコンサートや録音でスター・ウォーズを 演奏する時代を迎えた。なお、LSOはエピソード1~6までの長きにわたり「スター・ウォーズ」シリーズの音楽を支えることとなった。
「スター・ウォーズ」メインテーマ ジョン・ウィリアムズ指揮ウィーン・フィル
https://youtu.be/54hoKbTWon4
「スター・ウォーズ」王座と終曲 ジョン・ウィリアムズ指揮ベルリン・フィル
https://youtu.be/C5g9vGfx59w?list=RDC5g9vGfx59w
「スター・ウォーズ」エピソード1~9の冒頭集 1~6はロンドン交響楽団
https://youtu.be/65AiMis768
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