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サブカルチャーとオーケストラ 日本編

前回の「映画音楽と名門オーケストラの関係」についての記事は、「スターウォーズ」の大編成管弦楽(ジョン・ウィリアムズ作曲)から始まった一大変革が、それまで少人数バンドや小編成オーケストラが 中心だった業界に風穴を空け、その後の映画音楽に一つの方向性を与えたという内容だった。今回もその続きとして「サブカルチャー(ポップカルチャー)とオーケストラ」について述べたいと思う。中でも、1978年のスターウォーズ公開前後の日本のアニメやドラマやゲームの音楽とクラシック系オーケストラの関係について例を挙げながら取り上げてみた。組曲「宇宙戦艦ヤマト」 言わずと知れた大人気アニメ。始まりとなったテレビシリーズ(1974)で音楽を担当したのが作曲家の宮川泰(ひろし)。彼はザ・ピーナッツや弘田三枝子、園まりなどの有名歌手たちに作品を提供し続けた歌謡界の巨匠の一人 だったが、このアニメ音楽によって新境地を切り開いたとも言える。アニメのヒット後、本人によって作られた交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」は、本格的なオーケストラ作品としての認知度も高く、日本のオーケストラコンサートのレパートリーの1つともなっている。https://youtu.be/q9ln6YVLMhM?list=RDq9ln6YVLMhM「宇宙戦艦ヤマト」初期のテーマ曲(1974)1時間耐久動画https://youtu.be/yjcebovQ_bQ?list=RDyjcebovQ_bQ交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」 宮川泰の指揮するオーケストラこの動画のオーケストラは、おそらく臨時編成のものと思われるが、息子の宮川彬良(あきら)が東京フィルを指揮した動画もある。https://youtu.be/XmHJtnEFTmQ?list=RD7nAgo2xymnk交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」 宮川彬良 東京フィルハーモニー 交響詩「ジャングル大帝」 1970年代半ばにシンセサイザーを駆使して、クラシック音楽に新風を吹き込むことになる冨田勲。アメリカのビルボード誌に載るなど世界でもリスペクトされるグレートな存在だったが、初期の彼は日本のテレビ番組の作曲家としてキャリアをスタートさせていた。「新日本紀行」や大河ドラマ「天と地と」「新・平家物語」「勝海舟」やアニメ「リボンの騎士」などのテーマ曲は今でも名作の誉れ高く、他に「今日の料理」のように大人から子どもまで広く親しまれた曲もある。https://youtu.be/iJXiuT2d45M?list=RDiJXiuT2d45MNHK「今日の料理」テーマ音楽(1957)作曲 冨田勲そんな彼が、日本初のカラー長編アニメ「ジャングル大帝」(手塚治虫)のためのいくつかの曲をフルオーケストラで演奏するために書いたのが交響詩「ジャングル大帝」である。これは、単にいくつかのメロディーをつなぎ合わせたものではなく、子どもたちや入門者などに管弦楽というものを教えるための作品だった。広いアフリカの大地を思わせる壮大なオープニングに先立ち、弦楽器、管楽器、打楽器などオーケストラを構成する各楽器を順番に紹介するナレーションなど、教育的な性格を持つ楽曲ではあるが、一個の交響詩としても十分に鑑賞に耐える作品である。(交響詩とは、形式や構成などに規則や取り決めの多い「交響曲」に対して、それらを持たない自由な表現の管弦楽作品を指す言葉。19世紀半ばにフランツ・リストによって考案された。)https://youtu.be/froiPcu934s交響詩「ジャングル大帝」(オープニングのみ)  冨田勲指揮 大阪大学交響楽団ここで演奏しているのは、若き日の手塚治虫が医師を目指して学んだ大阪大学の学生オーケストラである。(プロ並みの腕前)交響詩「ウルトラセブン」 これも交響詩であるが、日本のSFドラマ界に金字塔を打ち立てた番組の音楽をもとにしている。冬木徹によるテーマ曲は、ジャングル大帝と同じくホルンの雄たけびのような音など、もともとテレビ放映時からシンフォニックな響きを持っていた。しかし、このマーラーを思わせるような大編成のオーケストラ曲になったことで、さらに重厚さが増すこととなった。https://youtu.be/I7xBu-IqlLQ?list=RDI7xBu-IqlLQ交響詩「ウルトラセブン」冬木徹指揮 東京交響楽団 ドラゴンクエスト 世界に数え切れないファンを持つゲームの音楽である。元々バロック的テーストの濃い音楽なので、クラシックのフルオーケストラが演奏することで、より格調高いものとなった。作曲者のすぎやまこういちは歌謡界の大御所作曲家だったが、今では「ドラクエ」の作曲者といった方が通りがいいかもしれない。彼が終生愛したといわれる東京都交響楽団(東京交響楽団とは別団体)を中心に,海外のオーケストラにまで演奏される、もはや古典的作品とさえ呼び得る楽曲である。東京都交響楽団は、1964年の東京オリンピック記念文化行事の一つとして誕生し、ドラクエの音楽は、2022年、東京オリンピックの選手入場音楽の一つとして選ばれた。アニメというサブカルチャーとクラシック音楽の団体は、オリンピックという絆で結ばれていたのである。https://youtu.be/T8-xGd-213o?list=RDT8-xGd-213oドラゴンクエスト 準・メルクル指揮 東京都交響楽団https://youtu.be/Vz5Dk0k9ZpI?list=RDVz5Dk0k9ZpIドラゴンクエスト すぎやまこういち指揮 東京都交響楽団

変容する植物その3 ベルニーニ「アポロンとダフネ」

ローマのバロック美術を代表する芸術家、ジャンロレンツォ・ベルニーニ(1598 – 1680)は、絵画、彫刻、建築、都市計画など広範囲に活躍しました。彫刻家の父ピエトロの工房での修行時代に早くも頭角を現し、その才能を見抜いた枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼはこの若き芸術家に次々と作品を依頼、その後押しによって、ベルニーニはローマの上層階級に名を知られることになります。ローマ市街の北東部に位置する枢機卿の別荘、ヴィラ・ボルゲーゼは、今日国立ボルゲーゼ美術館として、かつてローマ随一の富を誇ったこの一族の美術コレクションを展示しています。中でも若年のベルニーニが手がけた一連の彫刻作品は、以後のバロック彫刻の方向性を定めたものとして重要です。その中の一点、「アポロンとダフネ」(1622-25)を見てみましょう。美しいニンフ、ダフネに心を奪われたアポロンは、逃げるダフネを追いかけます。まさに捕らえられようとしたその時、ダフネの父である河の神は、ダフネを月桂樹に変容させたのでした。人間が植物に姿を変えるという物語は古今東西に見られますが、ベルニーニの作品は、大理石の硬質な素材感を活かしながらも、ダイナミックな流動性を実現させた点で画期的でした。アポロンの手がダフネの体に触れた瞬間、ダフネの指先は月桂樹の葉に変わり、足首からも枝が生え、爪先は根になっていきます。二体の彫像は螺旋状の動きを示し、本来空間芸術である彫刻が、鑑賞者にとっては時間芸術のように感じられるのです。

イランとホルムズ海峡と… シェヘラザード リムスキー・コルサコフ

ヨーロッパの猛暑に比べればずっと涼しいバンクーバーも、今やすっかり夏ですね。夏といえば海。古来、海に憧れた芸術家は数多くいます。今回はその中からリムスキー・コルサコフ(19世紀ロシア)の交響組曲「シェヘラザード」をご紹介します。幼年時代から海に憧れていた彼は、若き日に海軍士官となって遠洋航海に出ます。しかし「海軍に入ってすぐに激しい幻滅に襲われた」そうで、そこで方向転換。やはり子どもの頃から才能を見せていた音楽の道に転じた人物です。リムスキー・コルサコフの音楽の特徴として、その色彩豊かな管弦楽法が挙げられます。たとえば、彼の代表作「スペイン奇想曲」に見られるキラキラとした輝きは、極彩色の絵画でも見るような趣を持っていて、とうてい雪深く色の乏しいロシアの地に生まれ育った人物の作とは思えないほどです。そういった彼の管弦楽の魔法を学ぶため、ストラヴィンスキーやレスピーギなど多くの若き才能たちがリムスキー・コルサコフのもとに集まったのでした。彼らは後に近代音楽の花を咲かせることになります。そんなリムスキー・コルサコフ最大の代表作が、ペルシャ起源の「アラビアン・ナイト」(千一夜物語)を元に作曲された交響組曲「シェヘラザード」です。シェヘラザードとは、アラビアン・ナイトに登場する女性の名前です。女性不信に陥った皇帝サルタンは、次から次へと若い女性をめとりながら、初夜に殺害するという誓いを実行に移していました。やがて彼の妻となったシェヘラザードは、皇帝が我を忘れて聞き入る話を夜ごと語って聞かせては、物語の大詰めになると「続きはまた明日」と引き伸ばしながら、毎夜命を長らえていました。そんな日が数え切れぬほど続いていくうちに、ついにサルタンは当初の誓いを自ら破棄してしまうのです。このシェヘラザードが語ったという設定で展開する物語の数々が「アラビアン・ナイト」(千一夜物語)です。交響組曲「シェヘラザード」の冒頭で聴かれる強圧的で傲慢さを感じさせる主題(メロディ)が皇帝サルタンを表すのに対して、ハープの伴奏に乗って、ソロバイオリンによって優美に奏でられるのがシェヘラザードの主題です。どちらも全4楽章の中に何度も形を変えながら登場します。4つの楽章は「海とシンドバッドの船」「カレンダー王子の物語」「若い王子と王女」「バグダッドの祭り、難破する船」など、いずれもアラビアンナイトから取られた副題を持っています。しかし、それを知らなくても、音楽自体の生命力や美しさによって何度も繰り返し味わいたい魅力にあふれた作品です。なお、ペルシャは現在のイランに当たり、シンドバッドが船出して活劇を繰り広げた海は、ホルムズ海峡の名で呼ばれています。どちらも、全世界の視線を集めているあの地域です。https://youtu.be/r1nd_GmTOQU?list=RDr1nd_GmTOQU R・コルサコフ「シェヘラザード」シルヴェストリ指揮ボーンマス響この演奏は、私がまだ十代の頃に偶然出会って以来、愛聴してやまない座右の一枚で、ルーマニアの指揮者コンスタンティン・シルヴェストリとイギリスのボーンマス交響楽団による名盤と呼ばれる逸品です。シルヴェストリは、やや粗削りながらもスイング感あふれる演奏をするユニークな指揮者でした。そしてこの演奏のもう一つの聴きものが、当時、同楽団のコンサート・マスターだったジェラルド・ジャービスの雰囲気豊かなソロバイオリンです。彼はバンクーバー出身で、地元バンクーバー交響楽団のコンサート・マスターを務めたこともあります。また、鬼才ネヴィル・マリナーとともに、バロック音楽に新風を吹き込みおびただしいレコーディングを残したイギリスのアカデミー室内管弦楽団の初期メンバーの一人でもありました。晩年は、大阪フィルハーモニー交響楽団の招きを受けコンサートマスターを務めてくれたおかげで、朝比奈隆の指揮するブルックナーやマーラーのコンサートで、長身白髪の彼の生演奏を間近で何度も味わうことができました。その姿は今も脳裏に鮮やかに焼きついています。      

和太鼓・篠笛・津軽三味線ミニコンサート

間近で聴く強烈な和太鼓のリズムと、篠笛・津軽三味線の心を震わす響きを堪能して頂き、押し寄せる感動に浸って頂きたいと、桜楓会で企画し主催したミニコンサートが7月19日(日曜日)の午後、ダウンタウンの93Coffee で行われました。会員・会友の皆さん合わせて46名が参加してくださいました。これは会場の93Coffee のキャパシティいっぱいの数で、それ以上は市の条例で集まることができないということもあって、大変残念だったのですが参加希望をされてもお断りをせざるを得ない方々もいらっしゃいました。演奏者は和太鼓の金刺敬大さん、篠笛の武田朋子さん、津軽三味線の佐藤史織さん。皆さんそれぞれが長い演奏活動の実績を持つプロの方々です。今回はTsumugu Project という名のチームを組んで、共演とソロを交えながらおよそ1時間の演奏で我々を楽しませてくれました。キャッツ幸子さんのスタート宣言と松尾会長の挨拶に続いて、力強い演奏が始まりました。途中、金刺さんの軽妙な司会と文字通り会場が振動するような和太鼓のソロ、そして同じく“弾く”というより“たたく”といったほうがふさわしいと思えるような津軽三味線の演奏、また想像していた以上に力強い響きを醸し出す篠笛の演奏など、すっかり引き込まれてしまいました。また3者の共演も素晴らしく、和太鼓と篠笛は懐かしい昔に神社の境内で聴いた、夏祭りのお囃子を思い出させるような郷愁を感じさせてくれました。また演奏の合間に篠笛の武田さんと津軽三味線の佐藤さんから、それぞれの和楽器についての由来や構造、演奏の仕方などについての解説もありました。なかなか普段は聞く機会も無いものなのでとても興味深く、篠笛や津軽三味線が今まで以上に身近に感じられるようでした。会場の93Coffeeでは、演奏会が終わってからも演奏の皆さんたちと写真を撮ったり歓談をするなど、お店のご厚意で貸し切り状態でした。最後にお店を出たのは薄暗くなりかけた夜の9時ころでした。参加された皆さんといろいろとお話をする機会があったのですが、「素晴らしい演奏会だった。感動した。」という感想が圧倒的に多くて、企画が成功裏に終わって本当に良かったという印象が残った和楽器ミニコンサートでした。写真・動画はこちらから: https://photos.app.goo.gl/ktzUR59yhg4N8W2U6                         (記:久保克己)

ガウディのごと バイオリンとオーボエのための協奏曲 バッハ

生前は、前例のない様式の建築物を作り続け、奇想の建築家として常に批判にさらされてきたスペインのアントニ・ガウディですが、今はその建築物のうち7点が世界遺産に登録されています。その中で最大規模のサグラダ・ファミリア贖罪教会が今年完成したというニュースが 世界を駆け巡りました。しかし、完成したのは聖堂全体ではなくメインタワーである「イエスの塔」でした。今年没後100年を迎えた彼の命日である6月10日、塔完成を祝うミサがローマ教皇レオ14世によって当地で執り行われました。このバルセロナの大聖堂には未完成の塔がまだいくつもあり、全体の完成には、なお10年ほどを要する見込みです。サグラダ・ファミリアは今から144年前に着工されましたが、その道のりは苦難の連続でした。当時のスペインは、産業革命の波に乗り、急速に工業化が進むとともに、富裕層(雇用主)と貧困層(労働者)に社会が分断される深刻な事態に陥っていました。ある日、富裕層が 集まる劇場で、貧困層の青年が投げ込んだ爆弾により観客の多くが死傷するテロ事件が発生します。これをきっかけとした市民たちの発願と寄付から、この大聖堂の建設が始まり、ガウディが監督となりました。しかし、資金難から工事は難航を極め、さらにガウディの死後に起こったスペイン内乱によって、聖堂の大半が破壊され、ガウディの工房も焼け落ち、設計図も失われました。何度となく危機を迎えた聖堂建設ですが、「明日はもっといいものを作ろう」というガウディの遺志を継いだ弟子たちの懸命の努力と建築技術の発達により、近年急ピッチで工事が進行しています。(イエスの塔の着工は2018年。その後わずか8年で完成。)生前のガウディは、人間どうしを隔てる差別や分断に心痛めていたと言われます。死後100年を経て、融和よりも分断の方向に重心がかかっている現代、ローマ教皇がミサの中で語った「イエスを信じながら無実の人を殺すことはできない」という言葉は、大聖堂の地下に眠る彼の魂にはどう響いたことでしょう。ちなみに、サグラダ・ファミリアは近年の活動として、スペイン語が堪能でない移民や難民を対象とした観覧日を特別に設けています。これもガウディの遺志を継いでのことと思われます。さて、ガウディの死や内乱によって失われた大聖堂のプランや設計図という、頼るべき資料の大半が手元にない厳しい状況の中、弟子たちはどうやってイエスの塔のプランを復元し、塔そのものを完成させることができたのでしょうか。そのために強い味方となったのが、完成した大聖堂をイメージして生前のガウディが描いていた構想図(スケッチ)と石膏模型などのわずかな資料でした。        それを聞いて思い出すのは、オーボエをソロ楽器としたバッハの協奏曲です。彼は10曲以上のチェンバロ協奏曲を残しましたが、それらはほとんどが他の自作曲からの編曲であることが分かっています。しかし、楽譜の失われた多くの原曲は、もとはどんな曲 だったのか不明でした。ところが20世紀に入りバッハ研究が進むにつれ、次第に失われた原曲の姿が復元可能となってきました。わずかに残された原曲と編曲を比較検討することで、バッハが編曲する際のルーティンや癖やこだわりが明らかになり、現代に比べてはるかに楽器が未発達だった当時(18世紀前半)の状況から、独奏していた楽器の種類も断定できるようになりました。今回はその中からバイオリンとオーボエのための協奏曲(復元された原曲)とチェンバロ協奏曲(編曲)を並べてご紹介します。https://youtu.be/wU4fXV-ySg8?list=RDwU4fXV-ySg8 バッハ バイオリンとオーボエのための協奏曲 ニ短調 原曲(復元) https://youtu.be/jEJi-KfYqIQ?list=RDjEJi-KfYqIQ   バッハ 2台のチェンバロのための協奏曲 ハ短調 編曲このバイオリンとオーボエのための協奏曲は、復元ながらバッハの作品の中でも高い人気を誇る佳曲です。    

健康講座 吉川英治先生による「高齢者向け楽しいボクササイズセミナー」

去る6月13日(土)の午後、生長の家バンクーバー会館の集会所は輝くような笑顔に包まれていました。日本人では初の『全米殿堂入り』ボクサー吉川英治先生。幾人もの世界チャンピオンをコーチし、「Compassionate Pugilist(思いやりの拳士)」として名高い吉川英治先生をお迎えしたボクササイズセミナー。参加者は13名(会員9名、会友4名)を数え、会場は始まる前から熱い期待感に満ちあふれていました。幕を開けたセミナーで私たちを待っていたのは、吉川先生のユーモア溢れる、どこまでも優しいご指導でした。先生の軽妙なトークに、張り詰めていた空気は一瞬で和らぎ、会場のあちこちから笑顔がこぼれ落ちはじめます。ひとたび体を動かし始めると、その楽しさは私たちの想像を遥かに超えるものでした。現代のボクシングは、決して単なる格闘技ではありません。それは、私たちが生涯を自分の足で、若々しく歩み続けるための「究極の健康法」だったのです。軽くシャドウパンチを続けるだけで、みるみるうちにうっすらと汗が滲み心肺機能が鍛えられていきます。これを続ければ、普段の生活で階段や坂道に出会っても、もう息切れすることはありません。また、先生の合図に合わせて膝を曲げる防御姿勢は、実は知らず知らずのうちに理想的なスクワット運動へと繋がっており、私たちの足腰を劇的に進化させていきます。さらに驚かされたのは、動体視力へのアプローチです。パートナーから繰り出されるパンチに対して、瞬時に目のピントを合わせるトレーニング。これによって鍛えられた動体視力と反射神経は、日常生活で歩いている時に人や車、障害物をサッと避ける力になり、果ては山歩きで上から落ちてくる石をパッと避けるといった、いざという時の護身の力にまで直結します。吉川先生は、シニア世代にとって最も恐ろしいリスクについても情熱を込めて語ってくださいました。万が一、転倒して大腿骨を骨折し入院することになれば、筋肉は恐ろしい勢いで減少する「サルコペニア」を引き起こします。それは、寝たきりや認知症の発症という、人生を一変させてしまう危機へと繋がっているのです。家の中でも外でも歩道を歩いてるだけでも、人、自転車、電動スクーター、電動車椅子の人、強引にクロスしてくる車、歩道に突き出た手入れされていない尖った木の枝、道路の穴、段差などあらゆる危険が潜んでいます。だからこそ、ボクササイズが必要なのです。転びそうになった瞬間にグッと踏みとどまり、バランスを真っ直ぐに戻す「反射神経」。迫る危険を察知する「動体視力」。そして体を支える「太ももの筋肉」。この三つを即座に連動させる力をつければ、転倒のリスクを大幅に減らすことができます。ミットにパンチが綺麗に決まった瞬間の快感、そして「できた!」という喜びで、会員の皆様の楽しそうな笑い声や笑顔は最後まで止まることがありませんでした。あらゆるケガを予防し、笑顔溢れる楽しい健康生活を送るために、吉川先生のボクササイズは本当に心からお勧めです。セミナー後の吉川先生からのコメントです。「教えて頂いたのは、こちらの方です。皆さんのポジティブさ、優しさ、明るさに感謝です。ボクシング教室が本当に目指すのは、平和な社会です」との事です。奇跡のような興奮と感動を与えてくださった吉川先生、そして共に汗を流した13名の勇敢な仲間の皆様、本当にありがとうございました。写真はこちらから:https://photos.app.goo.gl/Txu3iDbJzdXqhZhG9次のボクササイズは8月8日(土)午後1時30分より生長の家バンクーバー会館(305 East 16th ) に於いて行われます。 (記:渡嘉敷治夫)a

血湧き肉躍る響き 映画とオーケストラ

今月の22日、映画「スター・ウォーズ」最新作の公開が始まった。5月のスター・ウォーズ記念日に合わせてのことかもしれない。今回はエピソード6と7の間を埋めるストーリーのようだ。半世紀前、まだ10歳だった1977年に映画館で見た「エピソード4」(第1作)の感動が今も忘れられず、そのときめきをこの最新作で再現したと今回の監督は語っている。彼と同じように、この映画を初めて見た時の感銘を語る者は、世界に数知れない。かく言う自分も、2時間があっという間だったことを今でもよく覚えている。その日本での公開は、アメリカの1年後だったこともあって、この映画の圧倒的な評判とともに、すでにさまざまな情報が日本にもたらされていた。映画の世界では、昔から「名画には名曲あり」という言葉がある。優れた映画には、必ずと言っていいほど優れた音楽が付随しているというわけだ。古いものだが「ウエストサイド・ストーリー」や「サウンド・オブ・ミュージック」、「タイタニック」などはその最たるものと言えるだろう。そして、「スター・ウォーズ」も、映画そのものと同じぐらい音楽が評判になっていた。その中で自分がいちばん興味をもった点は、この映画の音楽全てをロンドン交響楽団が演奏しているという事実だった。ロンドン交響楽団(以下LSO)は、イギリスのナンバーワンにして、世界的なトップオーケストラである。その長い歴史の中で世界の巨匠たちと成し遂げてきた名演奏は、枚挙にいとまがない。それがハリウッド映画の伴奏を務める?なぜ?自分も含めて世間の反応はおおむねそんな感じだった。オーケストラはクラシック、つまり芸術音楽を演奏するための団体で、映画のような娯楽音楽には関与しない。そんな不文律があった時代の話である。つまりサブカルチャーと芸術の間には深い溝があったのである。それは作曲においても事情は同じだった。映画音楽を含めたポピュラー系の作品は、クラシック音楽よりも一段下の音楽であるという認識が当時は支配的だった。「ロミオとジュリエット」「ゴッドファーザー」など映画音楽の名作を残したニーノ・ロータは「自分はクラシックの作曲家で映画音楽は趣味に過ぎない」と常々公言していた。同じイタリア人で「ニュー・シネマ・パラダイス」「ミッション(ガブリエルのオーボエ)」やマカロニ・ウエスタンの名曲を物したモリコーネも、音大で学んだのは現代音楽であり、生活のために引き受けた映画の仕事には長い間ジレンマを感じていた。が、ある時思い立ってメロディ優先の路線に舵を切ったところ、それが大衆に支持されたことから音楽家としての新たな使命に目覚めたと語っている。やはり現代音楽が主だったにも拘わらず、今や、世界に愛されるジブリアニメの専属作曲家ともいえる久石譲にもよく似た経緯があった。人生は何が転機になるか分からない。長い間、ハリウッドの映画音楽は主に地元の音楽家たちが担ってきた。現地には常にフリーランスの音楽家たちが集まり、映画会社との契約の中で、その度に臨時編成のバンドや楽団を組んでは作品作りに参与していた。したがって、本来ならば「スター・ウォーズ」のサントラもその形での収録となるはずだった。それがなぜ歴史ある交響楽団の起用となったのかといえば、一つは作曲者のジョン・ウィリアムズが自分の音楽を演奏するには、本格的な大編成の管弦楽団を必要とすると感じていたからだった。彼も専門教育を受けた作曲家で、「スター・ウォーズ」より後の「インディ・ジョーンズ」や「ジュラシック・ワールド」や「ハリー・ポッター」などの音楽も、既存のクラシック作品と比べて何ら遜色のない分厚く豊かで壮麗な響きが魅力の一つとなっている。もう一つの理由は、当時、同団の常任指揮者だったアンドレ・プレヴィンとジョン・ウィリアムズが親しかったということが挙げられる。若い頃は二人とも同じ作曲家の弟子だった。プレヴィンは、もともとジャズピアニスト、作曲家として成功した人物で、ジャズの  名盤をいくつも残し、映画音楽の世界でも多くの功績を残していたが、やがてクラシックに進出し、当時躍進中の指揮者だった。また、クラシックファンにはあまり知られていなかったことだが、LSOはそれ以前からロック音楽との関りが深かった。たとえばイギリスのロック音楽をオーケストラ用にアレンジしたレコードを出したり、リック・ウェイクマン(ロックグループ「イエス」のメンバー)がジュール・ヴェルヌの同名小説から作ったシンフォニック・ロック「地底探検」のコンサートに参加するなど、クラシック以外の音楽とも親和性を高めていたのである。リック・ウェイクマン「地底探検」 ロンドン交響楽団https://youtu.be/-EcNdiNaYl8?list=RD-EcNdiNaYl8  LSOに続いて、アメリカのロス・アンジェルス・フィルハーモニーが録音した「スター・ウォーズ組曲」のレコードがスマッシュヒットを記録すると、堰を切ったように世界中のオーケストラが、こぞってジョン・ウィリアムズの大編成映画音楽をレパートリーに加えていった。そして、クラシック音楽の二枚看板ともいえるウィーン・フィルとベルリン・フィルも、ついにコンサートや録音でスター・ウォーズを 演奏する時代を迎えた。なお、LSOはエピソード1~6までの長きにわたり「スター・ウォーズ」シリーズの音楽を支えることとなった。「スター・ウォーズ」メインテーマ ジョン・ウィリアムズ指揮ウィーン・フィルhttps://youtu.be/54hoKbTWon4「スター・ウォーズ」王座と終曲 ジョン・ウィリアムズ指揮ベルリン・フィルhttps://youtu.be/C5g9vGfx59w?list=RDC5g9vGfx59w「スター・ウォーズ」エピソード1~9の冒頭集 1~6はロンドン交響楽団 https://youtu.be/65AiMis768